「自分の家から近いから」顧客を郊外の店に連行した、リーダーの驚愕の算盤勘定とマイルール

異業種のビジネスオーナーやリーダー層の相談に乗る中で、私はよく職場の人間関係や個性の違いを「カラー」に分類して分析しています。

前回は「すき焼きの肉1枚」で上司の器が透けて見えたお話をしましたが、今回はその第2弾。周囲への気配りやホスピタリティが人一倍強い「レモン」の知人が体験した、あるビジネス懇親会での「笑えないほど利己的なリーダー」のケーススタディを共有します。

マネジメント層の些細な行動が、どれほどチームの信頼と顧客からのリスペクトを一瞬で失墜させるか、反面教師としてご覧ください。

異例のメンバーで臨んだ、ある「郊外」での懇親会

その日は、普段は少人数で動いているチームに、県外からお招きした大切なお客様(黄色カラー)と、技術職の同僚(ブルーカラー)、そしてチームを率いる上司(黒カラー)にレモンさんを加えたメンバーで、親睦を深めるための食事会が開かれることになりました。

日頃、周囲がセッティングするお店に対しては「飲み放題に美味い酒が入っていない」「メニューが安っぽい」と、誰よりも口うるさく条件を突きつける黒の上司。しかし、なぜかこの日に限っては「俺が直々に良い店を予約しておくから」と、自ら進んで幹事を買って出たのです。

レモンさんやブルーの同僚は、「お客様は遠方から来られるので、アクセスの良い駅近くの店がいいのでは?」と事前に進言していました。しかし上司はそれを頑なに拒否。「俺がよく知っている隠れた名店があるから」と、押し切る形で予約が確定しました。

当日、指定された場所に向かって全員が絶句します。 そこは、会社の最寄駅からも繁華街からも遠く離れた、上司の自宅のすぐ近所にあるローカルな居酒屋だったのです。

行きがけのアクセスは最悪。上司だけは「自分の通勤定期の範囲内だから」と涼しい顔。他のメンバーやお招きしたはずのお客様は、各々自腹でバスや乗り継ぎを駆使して、ようやく現地にたどり着く有様でした。

歓迎の席が「自分ファースト」の利権に変わる時

さらに驚いたのは、その「名店」の中身です。 メニューはどこにでもあるような内容で、おもてなしに相応しい地元の名物や美味しいお酒などは皆無。飲み放題のラインナップも驚くほど貧弱でした。

「せっかく県外から来てくれたのだから、美味しい地元の食材を食べてほしかった…」と、レモンさんは周囲に気を揉んで胃が痛くなるばかり。食事が始まっても、上司は「前に対面でテイクアウトしたら美味かったから、ここにしたんだ!」と悪びれる様子もありません。お客様(黄色)は上司の昔の後輩にあたる立場だったため、気を遣って文句ひとつ言わずに耐えていました。

しかし、冷静なロジックを持つブルーの同僚は、その店の「一人あたりの単価」が内容に全く見合っていない割高なものであること、放置すれば上司だけが特をするシステムに瞬時に気づいていました。

その上司の狙いは、徹底的な「自己利益の回収」だったのです。

  • 行き帰りは自分の足(自宅の近さ・定期圏内)が最優先
  • 支払時は全員から現金を回収し、自分のクレジットカードで決済してポイントを獲得
  • さらに、手元に持っていた地域限定のプレミアム割引クーポンをフル活用して支払額を浮かす
  • その上で、ちゃっかり会社には「満額の領収書」を提出して経費精算する

要するに、お客様を歓迎するための公的な席を、「自分が一番楽をして、小銭とポイントを最も効率よく稼ぐための私的なイベント」にすり替えていたのです。

場の空気を凍らせる「マイルールの押し付け」と、驚愕のダブルスタンダード

さらにレモンさんを苦しめたのは、宴席での「会話の内容」でした。

せっかくの懇親の席。お客様がご家族への感謝や、温かい家庭の話題で場を和やかに盛り上げようとしてくれているまさにその時、黒の上司は信じられない言葉を放ちました。

「いや、私はそうは思いませんね。うちの家庭ではね……」

そう言って始まったのは、お客様の意見の全否定と、自らの「異常な家庭内マイルール」の自慢話でした。 家事のやり方や料理の味付け、果ては家族のスマートフォンの通信プランにまで細かく干渉し、いかに自分が主導権を握ってコントロールしているかという話を、延々とまくし立てたのです。

おめでたい席や遠方からのゲストを迎える場では、極力マイナスな発言を避けてポジティブな空気を保とうとするのが、レモンさんの持つホスピタリティです。しかし、上司の独演会によって、個室の空気は見る見るうちに凍りついていきました。

さらに周囲を呆れさせたのは、その凄まじい「ダブルスタンダード(二重基準)」です。 家族には「数十円、数百円の無駄遣いも許さない」と激怒して通信会社を強制解約させるほど縛り付ける一方で、この上司自身は、会社の固定電話から平気で長々と私用電話をかけるような、公私の区別のつかない人物だったのです。

自分の公私混同はスルーし、身内の小さな出費には牙をむき、お招きしたお客様の前でそれをドヤ顔で披露する。 「自分ルールこそが絶対」という黒のダークサイドが、食事の質だけでなく、会話の質まで完全に破壊してしまった瞬間でした。

2時間が過ぎ、残されたメンバーの冷ややかな視線

宴席の2時間が終わり、お開きになった瞬間、最後のトドメが刺されます。

「じゃあ、俺の家はすぐそこだから!お疲れ!」

黒の上司はそう言い残すと、満足げに歩いて自宅へと帰っていきました。夜の郊外に取り残されたのは、遠方から来たお客様と、気を揉み疲れたメンバーです。結局、駅までの高額なタクシー代は、見かねたブルーの同僚が「ここは私が」とスマートに大人の対応で自腹を切って出し、全員を送り届けることになりました。

後日、この一連の動きを冷ややかに観察していたブルーの同僚やレモンさんの間で、上司への信頼が完全にゼロになったのは言うまでもありません。

📈 今回のカラー分析とビジネスの教訓

このエピソードから見えるのは、リーダーが主導権を握ったときに現れる「矢印の向き」の恐怖です。

  • 黒のダークサイド: 支配権を握ると、全ての判断基準が「自分がどれだけ得をするか(タイパ・コスパ・マウント)」という内向きの矢印になります。上下関係(元後輩という関係)を利用した甘えも、黒の歪みの典型です。
  • レモン: 「ゲストに喜んでほしい」という外向きの矢印が強い反面、黒の暴走を止められずに一番ストレスを抱え込んでしまいます。
  • ブルー: 感情に流されず、相手の矛盾(ダブルスタンダード)を冷静に見抜き、最終的には大人のロジックで場を収めるセーフティネット。

立場が上になり、誰も文句を言わなくなると、人は「これくらい大丈夫だろう」と油断します。そして、見返りのないプライベートな行動(お店選び、会話の選び方、帰り際の後始末)にこそ、人間の本性が恐ろしいほど生々しく現れます。

自分の「自宅の近さ」や「数千円のポイント」、そして「お客様の前でマウントを取って得られるちっぽけな承認欲求」と引き換えに、部下からの信頼と、顧客からのリスペクトという、ビジネスにおいて最も失ってはいけない「目に見えない巨大な資産」をドブに捨てていることに、歪んだリーダーは一生気づかないのです。

皆さんの周りには、決定権を握った途端に「自分ファースト」になってしまうリーダーはいませんか?前回の「すき焼きの肉1枚~」記事はこちらから

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